※わかりやすく書き直しました
こんにちは!せりです。
産業医による職場巡視(事務職場)はどのくらいの頻度ですればよいのでしょうか。
答えは、月に1回以上もしくは2か月に1回以上。
この記事を読めばご自分の職場がどちらに当てはまるのか、その根拠も自信をもって説明できるようになります。
ぜひ最後までお読みください。
職場巡視は、産業医にとって最も重要な職務と言っても過言ではありません。
しかし、働く人からすれば、対応にそれなりに時間を取られますので、産業医の職場巡視が繁忙期と重なってしまうと大変です。
『早く終わって~』という職場の方々の心の叫びが聞こえてくることもあります。
そこで、この記事ではよく聞かれる以下の問題について取り上げます。
- 産業医による職場巡視は延ばしてもよい?
- 産業医による職場巡視はどのくらいの頻度で行えばよい?
- それらを定めている根拠法令は?
さっそく見ていきましょう。
まず【労働安全衛生規則】で職場巡視の頻度をチェック!
労働安全衛生規則とは?
労働安全衛生規則は、労働者の安全と衛生を守るための義務や罰則を定めた労働安全衛生法を補完する省令です。
労働安全衛生規則に書かれている産業医による職場巡視は、義務です。やらなくてはいけません。
職場巡視の頻度を定めた条文を確認
産業医の定期巡視について定めている箇所は、労働安全衛生規則第15条です。
この第15条は平成29年に改訂され、産業医による職場巡視が、毎月 → 2か月に一回(※条件があります)でもよいことになりました。
背景には、過重労働による健康障害の防止やメンタルヘルス対策の重要性が増す中で、産業医に求められる役割が変化し、対応すべき業務が増加していることがあります。
巡視を2か月に1回にするためのポイント
条文に書かれているのは以下の通り
- 産業医は月に1回は職場巡視をしなくてはならない
- ただし、事業者の同意があり、所定の情報が毎月提供されていれば、2か月に1回にしてもよい
事業者の同意?所定の情報?
どういうことでしょう
これについては厚生労働省のリーフレット(産業医制度に係る見直しについて労働安全衛生規則等が改正されました)に詳しく書いてありますが、ポイントをまとめると、
事業者の同意を得る = 産業医の意見に基づいて、衛生委員会等で調査審議を行い、職場巡視を2か月に1回にしてもよいとの了解を得る。
ただし、巡視頻度の変更は期限を決めて了承されるものであり、期限が来たら再審議する
(例:むこう6か月間は2か月ごとの巡視と期限を決め、期限が切れるときにまた審議する。)
所定の情報 とは
- 衛生管理者が行う巡視の結果
- そのほか、労働者の健康障害の防止や労働者の健康を保持するのに必要な情報
(ただし、これは、衛生委員会または安全衛生委員会で、産業医に渡してもよいか審議したうえで了承されていること) - 80時間以上※の時間外勤務を行った労働者の氏名及びその労働者に係る超えた時間に関する情報(ただし、休憩時間を除いて1週間40時間を超えて勤務した場合)
実際には、令和元年に「働き方改革関連法」によって産業医に提供しなくてはならない情報が定められ、「所定の情報」の2,3については職場巡視の間隔とは関係なく、必ず産業医に提供することになりました。
(詳しくは下の記事をお読みください)
ですから、実質的に産業医の職場巡視を2か月に1回にできるかどうかは、衛生管理者の巡視結果を提出できるかどうかにかかっているといえるでしょう。
衛生管理者の巡視とは
衛生管理者って誰でしたっけ?
衛生管理者は、その職場において、職場の衛生に関する事柄を管理する人です。詳細は省きますが、衛生管理者試験に合格するか、相応の資格が必要です。
常時50人以上の労働者を使用する事業場では必ず選任しなくてはなりません(労働安全衛生法施行令第4条)。
常時50人以上の事業場には産業医の選任義務もあるので、産業医がいる事業場なら衛生管理者はいると考えてよいでしょう。
衛生管理者は、少なくとも毎週1回作業場等を巡視することが定められています。巡視を行ったら必ず巡視記録を作成しましょう。
衛生管理者が職場巡視記録に書いておくべき事柄
- 巡視を行った衛生管理者の氏名、巡視日時、巡視した場所
- 巡視を行った衛生管理者が「設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるとき」と判断した場合における有害事項及び講じた措置の内容
- その他労働衛生対策の推進にとって参考となる事項
労働安全衛生法 第十二条(衛生管理者)
事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。
2 前条第二項の規定は、衛生管理者について準用する。
労働安全衛生法施行令 第四条(衛生管理者を選任すべき事業場)
法第十二条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする
労働安全衛生規則 第十一条 (衛生管理者の定期巡視及び権限の付与)
衛生管理者は、少なくとも毎週一回作業場等を巡視し、設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
2 事業者は、衛生管理者に対し、衛生に関する措置をなし得る権限を与えなければならない。
※強調 筆者
職場巡視を2か月に1回にした時の注意
衛生委員会での審議を経て職場巡視を2か月に1回にすることが了承された場合、嘱託産業医であればその職場への訪問頻度も2か月に1回になることが多いでしょう。
ここで忘れてはいけないポイントがあります。それは
職場巡視の間隔をあけるためには産業医に所定の情報を 毎月 提供しなくてはならないこと。
提供方法はメールでもよいので(「【詳解】産業医に毎月提供しなくてはならない情報にはどんなものがあるの?」参照)、忘れずに提供してもらいましょう。
まとめ
産業医による職場巡視の頻度について確認しました。
厳密に言えば、やはり産業医による職場巡視を延期することは難しそうです。
忙しいときこそ基本に忠実に、決められたことを粛々と行っていくことが、職場の安全を守るのかもしれませんね。
職場巡視の頻度について労働安全衛生規則に基づいて解説しました。
疑問点は解決できたでしょうか?
最後までお読みいただきありがとうございました。
またお会いしましょう。