こんにちは!せりです。
この記事では令和3年12月に改正された事務所衛生基準規則について改正ポイントをわかりやすく解説します。
そこで働く人の人数にかかわらず全ての事務職場に関係のある内容です。
ぜひ最後までお読みください。
令和3年12月、事務所衛生基準規則(以下 事務所則)が改正されました。
この事務所則、制定されたのは昭和46年。その後何度か改正されたとはいえ、今回改正されるまで、事務作業の例として「カードせん孔機」、「タイプライター」なんて書かれていましたし、睡眠または仮眠ができる場所には寝具のほか、「かや」を備えることとなっていたんです!いつの時代?
カードせん孔機ってなんですか!?
かやは買わないとだめでしょうか・・・。
カードせん孔機、昔の映画に出てきました…気になる人はググってみてください。
かやは、虫よけスプレーやベープマットみたいなもので代用するのでもいいんじゃないかと考えましたが、条文にはっきり「かや」と書かれているので悩みました。
今回、そのような時代に合わない言葉がなくなっただけでなく、現代の多様化する事務職場にあった基準に改正されています。
事務職場と言っても、ビル一棟が事務職場というオフィスビルから、マンションの一室で起業している事務職場までをひとつの規則で網羅しようというのですから、結構大変です。
さっそく見ていきましょう。
ポイント1 明るさ
今回の改正則では、照度の基準が変更になりました。
改正後 | ||
一般的な事務作業 | 300ルクス以上 | 情報機器作業を含む事務作業 |
付随的な事務作業 | 150ルクス以上 | 資料の袋詰め等、事務作業のうち、 文字を読み込んだり資料を細かく識別したりする必要のないものに限る。 |
新聞がラクに読める明るさが300ルクス程度と言われています。
ちなみに、改正前はこんな感じでした↓。
改正前 | ||
精密な作業 | 300ルクス以上 | 作業に応じてより高い照度を求めるべき。日本産業規格等を参照。 |
普通の作業 | 150ルクス以上 | 情報機器作業を含む |
粗な作業 | 70ルクス以上 | 資料の袋詰め等、事務作業のうち、 文字を読み込んだり資料を細かく識別したりする必要のないものに限る |
ポイント2 トイレ
事務所則では、働く人の人数によってトイレの数を規定しています。
これまでの基準では、ビルの中の事務所ならともかく、マンションの1室や一軒家での起業だとトイレを規則通りに設置するのは大変でした(というより不可能では・・・)。
これまでの基準をグレー枠、追加された新基準をオレンジ枠で示しましたので、ご覧ください。
原則として基準は変わらないのですが、新基準が追加されてより現実的になりました。
- 男性用と女性用に区別すること。
- 男性用大便所の数は、同時に就業する男性労働者60人以内ごとに1個以上とすること。
- 男性用小便所の箇所数は、同時に就業する男性労働者30人以内ごとに1個以上とすること。
- 女性用便所の便房の数は、同時に就業する女性労働者20人以内ごとに一個以上とすること。
- 流出する清浄な水を十分に供給する手洗い設備を設けること。
- 便所は清潔に保ち、汚物を適当に処理すること。
ただし、同時に就業する労働者が常時10人以内の場合
- 独立個室型便所が1つあればオッケー(男性用女性用を別にしなくてもよい)
- ただし、既に男女別のトイレがある場合、それを廃止することはできない
男性用女性用に区別した便所に追加して独立個室型便所を設置する場合
- 独立個室型の便所1個につき、上のリストから男女それぞれ10人ずつ減らしてカウントしてもよい
「独立個室型トイレ」とは、四方を壁等で囲まれた一個の便房により構成される便所でバリアフリートイレを含みます。
「独立個室型トイレ」じゃないトイレは「仕切り壁型トイレ」です。
デパートや学校などにもある、個室に壁とドアがあって鍵はかかるけれど上や下は少し空いているタイプのものですね。
独立個室型トイレには、いわゆるバリアフリートイレも含まれますので、働く人の多様化にも対応した現実的な規則になったと思います。
ポイント3 救急用具の指定がなくなった
改正前の事務所則では、事務所に備えなければならない救急用具として、具体的な品目(下グレー枠)が決められていましたが、それがなくなりました。
- ほう帯材料、ピンセット及び消毒薬
- 高熱物体を取り扱う作業場その他火傷のおそれのある作業場については、火傷薬
- 重傷者を生ずるおそれのある作業場については、止血帯、副木、担架等
たしかに、職場で大きなけがをした人や病人が出たとき、医療従事者がいなければその場で応急処置をするよりも医療機関に連れていくか救急車を呼ぶのが普通です。
ただし、何も用意しなくても良いか、というとそういうわけではありません。
という条文は残っていて、”リスクアセスメントの結果や、安全管理者や衛生管理者、産業医等の意見、衛生委員会等での調査審議、検討等の結果等を踏まえ、事業場において発生することが想定される労働災害等に応じ、応急手当てに必要なものを備え付けておくことが望ましい”(基発1201第1号「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」)とされています。
ポイント4 更衣室・シャワー設備、休憩所、休養所
更衣室やシャワー設備を設ける際には性別にかかわらず安全に利用できる必要あり。
プライバシーにも注意すべき
休憩の設備は事業場の実情に応じ、利用人数に応じた広さや、備えるべき設備の検討が期待される。
休養室や休養所は専用の設備でなくても、性別にかかわらず体調不良者等が常に利用可能であることが重要。
入り口や通路からの目隠し、出入り制限等、設置場所の状況等に応じた配慮をすべき。
ポイント5 作業環境測定の測定機器
中央管理方式の空気調和設備を設けている建物内の事務所では、定期的に温度、湿度、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度を測定することになっています(事務所則第7条)。
作業環境測定に用いられる一酸化炭素・二酸化炭素濃度の測定器がこれまで検知管に限定されていましたが、一酸化炭素濃度に関しては定電位電解法、二酸化炭素濃度に関しては非分散型赤外線吸収法(NDIR)等の、検知管と同等以上の測定器が使えることになりました。
定電位電解法とかNDIRとか言われても・・・。
そうですよね。検知管はある意味単純だったんですが、測定器はいろいろあってお値段もピンキリ。精度があやしいものもありそうです。
中央管理方式の空気調和設備を設けている建物なら、だいたいビル管(建築物衛生法)に基づいて測定されているはずなので、専門家に任せておけます。
一方、中央管理方式の空気調和設備でない建物の中の事務所の場合。測定の頻度は特に定められていないので、 例えば年に3,4回なら、レンタルという方法もあるかもしれません。
近くの産業保健総合支援センターに相談すると貸してくれたりしますよ。
まとめ
令和3年12月、事務所衛生基準規則(以下 事務所則)が改正されました。
改正のポイントは5つ。
より現実的ではたらく人にやさしい改正になったのではないでしょうか。
個人的には、「かや」を備え付けなくてよくなったことが一番のポイントです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
またお会いしましょう!
事務所の明るさ問題は、「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」も合わせて見ていく必要があります。
今どき、事務所でパソコンやタブレットなどの情報機器を使っていない、ということはまずありえませんからね。